第27回 変形性膝関節症
中高年の関節疾患の訴えで多いのが変形性膝関節症です。退行性疾患の一つで、加齢に伴い膝関節症の軟骨がすり減り、骨と骨がこすれ合って痛みが伴う炎症と考えられています。この疾患の発症を遅らせるには、下腿の前面にある大腿四頭筋や内側の筋肉など膝関節を支持する筋肉を鍛えることです。大腿四頭筋は伸筋で重力に逆らってからだを支持して、姿勢を保つための抗重力筋ですが、運動不足になると筋力低下しやすく、80歳で30歳の時の50%近くまで低下します。また下腿の内側の筋群は白筋(速筋)が多く、外側には赤筋(遅筋)が多くあります。白筋は加齢や運動不足によって早く衰えるとともに、筋線維も減少して筋萎縮しやすいのです。そのために外側の赤筋の筋力が勝るために、足がO脚傾向になって膝回りの筋力バランスが悪くなります。さらに膝の横ブレを防ぐ内側及び外側の側副靱帯も弱体化するために膝が不安定になり、大腿骨と骨が擦れ合って軟骨に障害をおよぼすのです。この状態が進行すると軟骨の過形成がさかんになり、骨棘が形成されて痛みが伴うことになるのです。予防するためには膝の屈伸やウォーキングで大腿四頭筋を強化します。歩くときには拇指側で蹴りだすように速足で歩くことで下腿の内側の白筋を鍛えることを意識することです。変形性膝関節症の治療で、健康補助食品であるアミノ糖の一種のN―アセチルグルコサミン(NAG)が注目を集めています。すでに欧米でも治療効果が報告されていますが、03年に大阪外語大保健管理センターの臨床投与試験(66~82歳の男女31人うち女性24人)では、階段の昇降や歩行に伴う痛み、膝の屈折角度などが改善し、さらにNAGの高用量添加の場合では重症患者の夜間自発痛が半減するなどの治療効果を確認したのです。痛みが軽減されれば膝関節まわりの筋肉運動もしやすくなり、脚の筋肉強化につながります。