第29回 運動で筋肉ができるわけ
他の細胞と同じように、筋肉の細胞の中では絶えず細胞の部品が作られていつも新しい部品が補われています。筋肉活動が多ければ多いだけ多くの部品を作る必要がでてきます。その部品が作られるようになるシグナルの一つが筋肉を動かすエンジン部分です。筋肉はおもにミオシンとアクチンでできていますが、エネルギーを作るのはミオシンの頭の部分といえます。ミオシンフィラメントの頭の部分ではATP(アデノシン三リン酸)をADP(アデノシンニリン酸)とリンとに分解して、そのときにできるエネルギーを使います。つまり筋肉の中でADPとリンの高度が高くなっているということは、それだけエネルギーを生産し、筋肉をたくさん動かしたということになります。それがシグナルになって筋肉内ではタンパク質を合成して新しい筋肉部品と入れ替えをするようになります。また別のシグナルとして、筋肉が使われれば筋細胞にミクロな損傷が起こります。それをサテライト細胞が察知して筋肉を作るように働きかけるルートがあります。さらに筋肉は運動神経によって運ばれる栄養物質の影響も受けていますから、運動神経がたくさん働くことは筋肉にたくさんの栄養物質が届くことになります。このように筋肉の活動が高まれば高まるほど筋肉の部品は多く作られるようになります。そのとき補充用に必要な量以上が作られます。こうしてミオシンフィラメントとアクチンフィラメントの本数が増える、つまり筋肉が増えることになるのです。