シンスプリント
シンスプリントは脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれています。骨膜、筋腱の炎症に起因する障害です。繰り返しのランニングやジャンプを過度に行った場合に発症しやすくなります。過度の運動量、運動時間、運動内容、日数またはフォームの変更、硬い路面、薄く硬いシューズ(踵の摩耗)、下肢の形態異常(O脚、回内足、扁平足など)、下腿三頭筋の柔軟性低下、股・膝・足関節の柔軟性低下、足関節可動制限などが発生の誘因となります。このうち、新入部員などにみられる急激な運動量増加が一番悪い影響を及ぼします。思い当たる点がある人は直ぐに改善しなければなりません。病態は下腿内側筋群の疲労による柔軟性低下、特にヒラメ筋を主として後脛骨筋、長趾屈筋付着部が脛骨の表面を覆う骨膜を牽引して骨膜炎を起こし、下腿内側の痛みを発生させるものと考えられます。ランナーの発生頻度が高く20~50%に発生すると言われています。
症状は、徐々に発生する下腿内側(主に脛骨内縁中1/3、目安として脛骨内果より12~20cm上)の圧痛、運動時痛、腫張が主症状で、足屈筋の抵抗運動で痛みは増強します。
症状の程度は次の通りです。
Stage1:痛みはあるがウォームアップにより消失する。
Stage2:ウォームアップにより痛みが消失するがスポーツ活動終了近くに痛む。
Stage3:日常活動に支障はないがスポーツ活動中は常に痛む。
Stage4:局所の痛みは常に存在して日常生活にも支障がある。
検査では、骨膜の炎症なのでレントゲン上では異常ないのが一般的です。症状が続く場合は再検査も必要です。レントゲン検査の場合、骨変化が出てきた時に疲労骨折と診断を変更します。MRI検査なら早期の疲労骨折が発見できます。
治療は、運動量など、考えられる原因を制限します。急性期は局所の安静(ランニングの休止)、アイシング、消炎鎮痛剤を用います。形態補正には足底板を用います。リハビリとして、痛みの強い急性期はランニングの休止を徹底しますが、局所の安静時期からでも下肢の荷重運動を避け、水泳、エアロバイク(踵でペダルを踏むように)、股関節、足関節、アキレス腱を中心とした下肢のストレッチングを行います。自発痛や歩行時痛が消失したら足趾でのタオルギャザー、足関節の軽いチューブトレーニングを行います。明らかな圧痛が消失したらウォーキングから始め、次に両脚踏み切りジャンプで痛みが出なければ、硬い路面を避けて軽いランニングを再開します。ただし、練習量を急激に増やすと、再び痛みが出やすいので注意してください。
下腿の痛みの原因として脛骨疲労骨折、コンパートメント症候群が挙げられます。実際、疲労骨折の初期像とは鑑別困難ですが、初期治療法は同様で良いでしょう。付着部の筋腱炎はほぼ同様の障害と言えます。
脛に痛みを訴える選手は、最近急激に運動量を増加してないかチェックします。リハビリに際しては十分な治療期間を待たずに早期復帰することや、急激な運動量増加は再発を招きますので注意します。練習前には動的ストレッチ、練習後には静的ストレッチングを行い、その日の疲労を残さないようケアを徹底します。