慢性硬膜下血腫②
慢性硬膜下血腫とは、忘れてしまうような軽微な頭部外傷などの後、通常1~2ヶ月かけて、頭蓋骨の下にあり脳を覆っている硬膜と脳との隙間にじわじわと血が貯まってくる病気です。血腫が脳を圧迫した結果、頭痛、物忘れ、認知症症状などの精神症状、失禁、半身に力が入らない、歩行障害、などの症状を呈する事が多いです。年間発生額度は人口10万人に対して1~2人とされ、右か左かのどちらか片側に血腫ができることが多いのですが、時には両側性(約10%)の患者さんもおられます。基本的には正しく診断がなされタイミングを逸することなく治療が行われれば完治する、予後のよい疾患です。
右側頭部硬膜下にできた慢性硬膜下血腫 (白っぽい三日月状の部分)
●診断
私たち脳神経外科医は、「この2、3ヶ月で頭を打った事がありますか?」という質問を患者さんにする事がよくあります。急に進行してきた認知症のような症状や物忘れ、少しずつ歩行がしづらくなってきたご高齢の方などにはまず聞いてみます。慢性硬膜下血腫は軽微な頭部外傷によって起きることも多く、このような問診が重要だからです。しかしながら、例えばドアに頭をぶつけたなどの軽い打撲や、もしくは飲酒時酔っている時の頭部打撲などは忘れてしまっている方が多いのも事実です。頭部単純CTあるいはMRIを撮影し、慢性硬膜下血腫の有無を確認するのが診断上重要となります。
●治療
血腫が少量の場合、自然に治癒する事もありますがそういった例は稀です。基本的な治療法としては外科的治療が推奨されています。極端に重症や特殊例以外は、穿頭ドレナージ術という比較的短時間で終了する手術を実施します。手術室で局所麻酔を用いて頭蓋骨に小さな穴を開け、そこから細い管を入れた上で血腫を洗い流します。入院してからだいたい1週間以内での退院となります。慢性硬膜下血腫は手術後に麻痺や認知症症状、頭痛などの症状が徐々に改善していく事がほとんどですが、術後の再発が約10%に見られます。これは人種や施設間などでも大き差は無いとされ、高齢者などで脳萎縮の強い方や血液凝固異常を有する方などでは再発を生じ易いとされています。再発を生じた場合は症状等を勘案しながら、再手術を実施したり、ある程度の期間血腫の大きさの経過観察を行ったりします。上記の説明を読んでもし症状等にお心あたりのある方は、医師にご相談下さい。
インターネットより抜粋しました。